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連帯保証債務は相続放棄できるのか?

例えば父親が亡くなったことを知り、父親の財産

である預金等のプラス財産(積極財産)と借金等

のマイナス財産(消極財債)は双方、相続の対象

となりますが

 

借金などがプラス財産よりも多い場合には、相続

の開始(死亡の事実)を知った日から3ヶ月以内

に全相続を放棄することができます。

 

そこで盲点となる、連帯保証債務について更に

深堀して解説します。

 

連帯保証債務は相続放棄できるのか?

 

通常の借金等は通帳の引落や請求書、金銭消費貸

借契約書などで相続人が把握するに当り、債務を

知ることは困難ではない。

 

しかし、連帯保証債務は、書類がない場合に債務

を調べる全国銀行個人信用情報センター等の情報

機関に調査をしても、主たる債務者(実際に借入

した者)ではない為、検索情報に出てこない。

 

この様な場合、相続人は連帯保証債務に気付かず

プラスの財産であれば、通常の単純承認(通常の

相続)をするのが普通であると思います。

 

相続人が父の相続発生から3ヶ月を遠に過ぎた頃

に父が連帯保証をしてあげた主たる債務者が破産

や倒産をして借金を返済できなくなった場合には

債権者(貸している側)は連帯保証契約に基づき

亡き父の相続人に借金の返済を請求できる。

 

この様なケースの実務を、実際に裁判で争われた

裁判判例で考察してみます。

 

■最高裁判例 昭和57(オ)82  貸金等 
昭和59年4月27日  最高裁判所第二小法廷 判決

 

概要は、連帯保証をした亡き父は、生前より定職

に付かず、ギャンブル好きで家庭内でも、いざこ

ざが絶えない生活だった。

 

その為、妻や子は家を出て音信不通の状態が10年

を過ぎた頃に、父は連帯保証人になった後に死亡

し、翌年に相続人である子供達に債権者から亡き

父の借金連帯保証の請求がされ、子供達は、すぐ

に相続放棄の申請をし、受理されたが、債権者側

が不服として裁判に発展したという判例です。

 

判決は、子供達が連帯保証債務の存在を知るまで

の間、これを認識することが著しく困難であつて

相続財産が全く存在しないと信ずるについて相当

な理由があると認められるとして、上告した債権

者を棄却しました。

 

■注目!上告者の意見が正しいとして判決を否定

した裁判官がいた!

 

本件、裁判には5人の裁判官がいたが、そのうち

一人の裁判官は判決を否定し、相続人である子供

達は連帯保証債務を引き継ぐと反対意見をした!

 

反対判決全文解説は、ここでは控えますが、反対

意見を見ると熟慮期間(3ヶ月)は債務等を調べ

る期間でもあり、調査が困難な場合には延長申請

もできる規定もあることなどから、本判決を認め

ると債権者(上告人/貸した側)に不測の損害を与

えるおそれがあるとして反対をしています。

 

ちばPMA相続サポートセンター 佐藤 浩之

 

過去の判例で連帯保証の事実を知ってから3ヶ月以

内であれば、放棄できると思い込まない方がいい

というのが私の印象です。

 

その為、常日頃から相続財産には隠れた連帯保証

債務があるのではないかと常に意識しておくべき

であり、実際に疑わしい場合には、熟慮期間を延長

し、更に放棄の判断が難しい場合には、迷うこと

なく専門の弁護士に相談して下さい。

                2023.03.19

 

 

※上記、掲載内容は投稿時点でのものです。

情報改定や法令改定等により、掲載情報が変っている

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