不動産賃貸事業の法人化のメリット・デメリット
よく見受けられるケースとして、個人の方が
相続税節税対策として、保有中の空き地に賃貸
アパート等を建て、個人不動産賃貸業を行って
いる方の対策として
更なる節税や資産分配などを目的として法人化
するケースについて、法人化の関するメリット
とデメリットをマトメテ簡潔に紹介します!
■9つの法人化メリット
①所得税が節税できる
個人の所得税は累進課税の為、所得が増えれば
所得税も増え、最高税率55%(住民税含)と
高額ですが、法人税は比例税率の為、税率が
一定であることです。
一般的には、課税所得が800~1,000万円以上で
あれば法人化した方が有利になります。
又、家族等を会社の役員にして役員報酬を払う
ことで給与所得控除を受けられ、更に節税効果
を発揮します。
②相続税も節税になる
所得を役員報酬という形で家族に分散すること
でオーナーの個人財産の増加を抑えられ、相続
税も同時に押さえられます。
また、役員報酬を受け取る相続人である子は、
財産形成できる為、相続税の納税資金として
準備できます。
③経費化の選択肢が多くなる
会社で役員が入る定期保険や医療保険等も経費
にできる為、法人税の圧縮になる。
その他、中小企業倒産防止共済制度の掛け金は
全額経費可能です。(最高800万円まで積立可)
④融資と信用度が向上する
個人で融資を受け、収益不動産を購入するより
も法人化することで、財務内容により融資を引き
やすくなり、信用力も向上することで、より大き
な収益不動産等をレバレッジを効かせて購入でき
るチャンスが広がる。
⑤融資の個人保証以外は、有限責任
アパート建築資金等を銀行から借入をする際、
個人保証付き融資などは別として、基本的に
資本金・出資金の範囲内の有限責任である。
⑥会社の所有権は株主となり分散や委譲し易く
親族を株主とすることで、相続税の分散が可能、
反面、経営権が分散して運営が上手くいかない
こともあるので注意。
⑦会社経費で役員退職金や生命保険に加入できる
会社の経費で退職金保険等に加入し、退職の際
は、納税資金や代償分割金として利用できる。
又、役員に対する生命保険も会社の経費で加入
でき、退職金同様、さまざまな使途に使える。
⑧消費税の免除と欠損金の繰越制度がある。
法人化から最長2年間は消費税の納税義務が
免除される(免除条件有)また、欠損金(赤字)
は10年間繰越ができる。
⑨認知症対策になる
個人名義の不動産の場合、名義人が認知症に
なれば、売却、大規模修繕、管理契約など一切
の法律行為ができず、賃貸経営ができなくなり
ます。
法人へ賃貸不動産を譲渡することで、認知症の
心配は完全になくなる万能薬といえます。
■6つの法人化デメリットに注意
①会社設立費用がかかる
株式会社で25万円~30万円程度
合同会社で10万円~15万円程度の費用が必要。
②運営費用がかかる
申告内容が個人より複雑な為、一般的には税理士
へ依頼する報酬が発生します。
また赤字の年であっても「均等割7万円」という
地方税が課税される。
また、法人の登記事項に変更があれば、登記の
変更手続きと費用が発生する。
③不動産取得税などの負担がある
賃貸不動産を法人へ名義移転する場合、不動産
取得税や登録免許税、司法書士報酬が発生する。
④税務署の調査率が高い
個人よりも法人の方が税務調査率は高めの為、
申告漏れ等があると、延滞税や過少申告加算税
などが発生するので注意!
⑤社会保険の加入が必要
社長1人であっても役員報酬を支払えば社会保
険加入が必須です。
役員報酬の約30%が社会保険料となり為、保険
料負担は大きな出費です。
※保険料は会社と役員又は従業員で折半
※個人事業の場合、従業員5人以上で要加入
⑥交際費に対する課税の違い
資本金1億円以下の中小法人では接待交際費は
原則的に800万円まで。
一方、個人事業主の場合、収入を得る為に支出
したものであれば、交際費の上限はなく経費計
上可能。
執筆者:ちばPMA相続サポートセンター 佐藤 浩之
法人化の検討は、単に節税だけに着目せず、分割
対策や納税資金対策にも応用できますが、
家族が保有する株も相続財産となる為、生前贈与
の検討や、経営権や事業承継、M&Aの譲渡など
の将来も視野にいれながら、専門家と共に慎重に
検討しましょう! 2023.7.16
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