遺言書の「税務調査を招く付言事項」とは
遺言書を作成する際に末尾に付言事項を記載し、遺産分割割合の理由や相続人達への気持ちを伝えることで、遺留分侵害がある遺言でも相続人間のトラブルなく遺産分をスムーズにする効果があります。
しかし、この付言事項の内容によっては、相続税申告に関する税務調査を招くこともある為、注意が必要です。
■税務調査を招く具体的な付言の例とは…
遺言書は税務署に提出する相続税申告書に添付する必要がある!その為、税務署も遺言内容を見ることになるのです。
■税務調査を招く付言の例
① 私が立ち上げた小さな会社を太郎が上場させてくれたおけげで、巨万の富を築くことができた。本当に感謝している。
★「巨万の富」とは人によって額は変わると思いますが、申告相続財産が2~3億程度であれば、他に隠し財産(名義株、生前贈与、海外資産等)があるのではないか?と思われ税務調査が入るきっかけになるかもしれません。
② 〇〇(妻)名義の預金は、万一があった際に皆で相談して使う目的で暫くは銀行に預けたままにしておくように…
★「〇〇(妻)名義の預金」とは、名義預金と解釈される為、本来、被相続人の財産であるものを妻名義の預金口座に預け、相続申告には記載していない!と判断され追徴課税等のリスクがあります。
■否定的な付言は避けるべき・・
親不幸をした相続人に対して、なぜ財産を渡さないかを記載するなどした場合、否定された相続人が他の相続人へやりきれない気持ちを向けてトラブルになることも想定される為、さけるべきです。
■バランスの悪い遺言は税務署の疑念を招く
付言は遺言の内容を補完する為に記載しますが、今回、弟に多く渡す理由は、生前、兄に自宅購入費〇〇万円や借金〇〇万円を肩代わりしてあげたから・・と記載すると
過去の贈与申告がされているのか税務署がチェックすることになります。
また、親所有の土地を安く売ってあげたとか、生命保険の名義を変えてあげたなども「みなし贈与」と判断される可能性がでできます。
執筆者:ISRコンサルティング管財 佐藤 浩之
贈与は6年で時効ですが、それより前のことだから大丈夫だろうとタカをくくってはいけません。
2024年以降の贈与は相続開始前7年までさかのぼって贈与されたものも相続財産に持ち戻される制度になっています。
相続をサポートする専門家は、このような付言の注意点までアドバイスしてあげられることが望ましいですね。 2024. 5. 26
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