相続した不動産を売却する際の注意点
昨今、相続した実家の不動産を使わないので、売却換金して相続人で分けたいとの案件が増加してます。
ひと昔前のように実家を長男が継いで、先祖代々土地を守るという概念が無くなりつつあるのが現実のようです。
その使わなくなった実家を売却し、各相続人で分ける際に注意しておくべき事項を纏めてお伝えします。
●事例)時価6,000万円の土地を相続人(子供)3人で分けるとした場合
【分け方は2種類】
1. 換価分割
※一旦、不動産名義を相続人全員で共有名義で相続登記し、その後、土地を売却して換金する方法。
2. 代償分割
※相続不動産を一人の名義で相続登記したのちに、売却し、売却代金の中から「代償金」を他の相続人2人に支払う方法。
ここまで見ると上記のどちらの分割方法でも最終的に3分の1づつ分けることになる為、どちらの方法でも問題ないように思えますが、次の注意点があります。
■譲渡所得税の問題
不動産を売却した場合、売却益に対して譲渡所得税と住民税で一般的には20%の譲渡所得税が課税されます。
(換価分割の場合)
相続人3人全員が確定申告を行い、譲渡所得税も3分の1づつ支払うことになります。※6,000万円×20%=1,200万円の3分の1(400万円)を各相続人が払う。
(代償分割の場合)
仮に長男が単独相続して代償分割した場合には、長男のみが確定申告をして1,200万円の譲渡所得税を納める必要があります。
従い、この譲渡所得税額を考慮した金額で分割しなければ、不公平は分割金額になりうるということです。
●譲渡所得税の軽減特例
① 取得費加算の特例
これらの特例は、換価分割か代償分割かで適用の仕方が変わる為、最終的な手残り金額に影響がでます。
ポイントは換価分割の際は、各相続人ごとに適用可否が判断されるのに対して、代償分割の場合には単独相続した者のみが適用判断の対象ということです。
■売却翌年の社会保険料の問題
4つの公的保険・・・
1. 会社員が加入する『健康保険』
2. 公務員等が加入する『共済組合保険』
3. 自営業者等が加入する『国民健康保険』
4. 75歳以上の高齢者が加入する『後期高齢者医療制度』
上記のうち1.と2.の保険は、不動産売却で得た所得(売却利益)は翌年の保険料に影響を及ぼさないが、3.と4.の加入者の場合には翌年の保険料が限度額まで上がったり、一時的に現役並所得者として医療費の負担が3割になる場合もあります。
※1.や2.でも扶養されている配偶者や親族が不動産の売却によって一定の所得を超えると、扶養から外れ、扶養者の所得税が上がると共に、国民健康保険に加入する必要が出てくる場合があります。
尚、不動産売却所得により保険料が上がった人でも、翌年には元に戻ります。
■分割方法は遺産分割協議書又は遺言書の文面で判断される。
換価分割は、分割方法を記載する必要があるのに対し、代償分割では代償金額を記載する必要がある為、代償金が特例されていない場合には換価分割と認定される可能性があるということです。
執筆者:ISRコンサルティング管財 佐藤 浩之
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