相続対策で建てる賃貸アパートと戸建賃貸どちらが有利か?【戸建賃貸分析編】
前編のアパート賃貸分析編はいかがでしたでしょうか?比較的土地を所有している地主様向けに住宅メーカー等から相続対策として提案を受けるのが賃貸アパートを建てませんか?というものです。
賃貸アパートと賃貸マンションは同じくくりとして、他の選択肢として戸建賃貸はどうなのか?
資産価値、投資価値、相続税対策、分割対策など広い視点から一般の方にも分かりやすく、今回は【戸建賃貸分析編】の解説と共に、賃貸アパートとの最終比較結果を公開します。
■前提と仮定(アパート・戸建共通)
・保有資産:駐車場1億円+現金1億円(相続税評価額同様)
・現況での相続税合計
{2億円−基礎控除(3000万円+600万円×2人)÷2×30%−700万円}×2=3,340万円
・家族構成:父、母、子1人(父の相続想定)
・借地権割合60% 借家権割合一律30% 賃貸割合100%
・新築10年後の価値減却率10%
■戸建賃貸対策試算
仮定:建築費:1棟2,000万円×4棟=8,000万円
潜在総収入:1棟の賃料15万円×4棟×12ヶ月=720万円/年
【相続税の圧縮効果】
土地の相続税評価:1億円×(1−借地権割合60%×借家権割合30%×賃貸割合100%)=8,200万円
建物の相続税評価:建築費8,000万円×60%(固定資産税評価額減)×(1−借家権割合30%×賃貸割合100%)=3,360万円
相続税評価合計:8,200万円+3,360万円+未利用金2,000万円=13,560万円
(相続税評価圧縮額)2憶円−13,560万円=6,440万円
相続税額:{13,560万円−基礎控除(3000万円+600万円×2人)÷2×20%−200万円}×2=1,472万円
(相続税減額) 3,340万円−1,472万円=1,868万円
【資産価値概算】
潜在収入720万円−空室損5%(36万円)−運営費10%(72万円)=営業純利益612万円
※戸建の運営費はアパートに比べ安くなる傾向にある。
市場価値(取引比較事例法)
土地2,500万円(土地1億÷4区画)+建物2,000万円/棟)×4棟=18,000万円
※建物の価値は新築コストの殆どが売値となる。
【投資価値概算】
インカム収入:営業純収入612万円×10年=6,120万円
10年後の価値:初年度市場価値 18,000万円×0.9(価値減価率▲10%)=16,200万円
建築前の市場価値2億円(駐車場1億+現金1億)−16,200万円(10年後の価値)=3,800万円の価値損
最終損益:インカム収入6,120万円−3,800万円の価値損=2,320万円
【相続時分割検討】
既に独立した4分割の不動産の為、相続人2人の場合、2棟づつの半分均等に単独資産として分けることができる為、共有名義のデメリットを回避できる。
【共有名義のデメリット】
・売却、大規模修繕は全員の合意が必要
・アパートの使用や管理に共有者の話し合いが必要
・共有者の相続ごとに共有者が増加する
・アパートの現物分割ができない
執筆者:ISRコンサルティング管財 佐藤 浩之
戸建賃貸分析編を纏めると
・相続税は1,868万円の減額(得)
・資産価値は2億円(同額)※2億円−資産価値18,000万円+未利用金2,000万円
・投資価値は2,320万円(得)
・分割検討は分割し易い
では、最終的にアパートと戸建賃貸とでは、どちらが、どの項目で有利なのか比較した答えが↓↓↓
・相続税:アパート2,100万円の減額(得) 〉 戸建賃貸1,868万円の減額(得)
・資産価値:アパート8571万円の減額(損)〈 戸建賃貸2億円(同額)
・投資価値:アパート▲1,714万円(損)〈 戸建賃貸2,320万円(得)
・分割検討:アパートは共有デメリット有 〈 戸建賃貸は分割し易い
上記の結果、相続税減額以外は戸建賃貸の方が有利という結果になりました。
相続税は建築した瞬間の評価額時点で相続が発生した想定で算出しており、現実には相続発生時期は数年、数十年先になる為、10年保有したと仮定した場合の相続税は資産の変動により変わっています。
相続税は資産の組換え等の対策でコントロールできますが、資産価値や投資価値は市場により決定される為、自己コントロールできないことも留意点です。
保有する土地をどの様に活用したら最も良いパフォーマンスを生むのか?方法性の事前無料相談も受け付けています。 2024. 9. 8
※上記、掲載内容は投稿時点でのものです。情報改定や法令改定等により、掲載情報が変っている場合がありますので、ご確認をお願い致します。