ISRコンサルティング管財

収益不動産の簡易評価分析(乗数分析)とは

収益不動産の評価方法にはDCF法やNCF(資本的支出を引いた正味純収益)による直接還元法などが支流ですが、どちらの方法も将来発生するであろうキャッシュフロー予測や運営費や資本的支出の試算など、時間と分析ノウハウが必要とされます。

そこで、購入物件を検討する段階で簡易的に分析して判断する方法(乗数分析)をご紹介します。

■乗数分析とは

購入予定の翌年の『安定時』NOIに、周辺類似同等物件の売却データから得られる乗数を掛けることによって、簡易的に物件の価値を見積るというものです。

※NOI=総潜在収益−空室損−運営管理費 の結果得られる正味営業収益のこと

●乗数分析算式:検討物件の安定時NOI×乗数=物件価値

●乗数の算出方法

1 ÷ 類似物件のキャップレート加重平均率

乗数計算例)A物件類似キャップレート 8.5%
      B物件類似キャップレート 8.0%
      B物件類似キャップレート 7.5% 

 加重平均キャップレート(A+B+C)÷3=8.0%

 1÷8.0%(平均キャップレート)=12.5(乗数)

●乗数と使った価値計算例

検討物件の安定時NOI(500万円)×乗数12.5=物件価値 6,250万円(乗数分析による価値)

【キャップレートの計算法】

・キャップレート=安定時NOI÷価値=1÷乗数
・乗数=価値÷安定時NOI=キャップレート
・価値=乗数×安定時NOI=安定時NOI÷キャップレート

世間では、乗数の逆数であるキャプレートを用いて価値を算出するケースが多いです。
すなわちNOI÷キャップレート=価値というものです。
注意は、簡易価値計算に上記の乗数法やキャップレート法を用いる場合、NOIが一定または比較的なだらかに成長している場合に用いるようにして下さい。


安定してないNOIを用いても、それは将来のパフォーマンスを表していないNOIの為、間違った価値になる為です。
このような場合には、安全なDCF法による評価法を用いて価値を算出すべきです。  

執筆者:ISRコンサルティング管財 佐藤 浩之

中古の既に収益が安定的に捻出されている不動産であれば、複雑なDCF法よりも簡易的な乗数法やキャップレート法の直接還元価値であっても、DCF法と大きな誤差は生じないと考えられています。

反面、土地を買って新築する場合などは収益がない期間やNOIが安定するまで時間を要する為、事業期間ごとに収益変動が激しくなります。
このような場合にはDCF法分析による価値算出が望ましいと言えます。 2024. 10.27

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