相続財産の単純承認とは
相続とは現金や不動産などのプラスの財産と借金などのマイナス財産を全て包括承継することを言いいます。誰もがプラスの財産ばかりではなく、借金や相続したくないプラスの財産もあるでしょう。
このような場合、必ずしも相続人が受け継ぐ必要がある訳ではなく、法律上は受け継ぎ方を選択できることになっています。今回は、3つある相続財産の受け継ぎ方のうち、単純承認について解説します。

■単純承認とは
被相続人の権利義務を無限に承認することをいいます。権利とはプラスの財産を指し、義務は主に借金等をイメージして下さい。
【単純承認となる2つのケース】
・法定単純承認:相続発生を知ってから何もせず3ヶ月を経過した場合には自動的に単純承認したものとみなされます。
・被相続人の財産を処分した場合には、単純承認したものとみなされます。
単純承認となる5つの処分行為の判別例
① 形見分け:基本は処分に該当しませんが、高価な衣類や宝石などを分配した場合には、形見分けの範囲を超え、処分に該当すると解されます。
② 葬儀の執行:相続財産を葬儀費用に充てる行為は処分に該当しないというのが判例での見解です。
③ 保険金の請求:保険金は相続財産ではなく受取人の固有財産の為、処分には該当しません。
④ 相続債権の取立・債務弁済:相続人が被相続人に対して有していた借金を取立受領した場合や、相続財産の不動産で債務を代物弁済した場合には処分に該当するという判例があります。
⑤ 相続人が相続財産を使ってしまったり、相続財産で被相続人の借金を返済してしまうと単純承認の処分に該当します。例として病院代や公共料金等を払ってしまうと単純承認とみなされる可能性があるので注意が必要です。
ポイントは被相続人の死亡から3ヶ月以内ではなく、被相続人の死亡を相続人が知ったときから3ヶ月以内に相続するかしないかを選択できるというところです。そうしないと疎遠だった相続人が相続開始を知らずに被相続人の死亡から3ヶ月経過した場合に、相続放棄等の選択ができなくなるからです。
また、莫大な借金があり相続放棄をするつもりだった相続人が上記に該当し単純承認したものとみなされるケースには注意が必要です。
執筆者:ISRコンサルティング管財 佐藤 浩之
次回は連続して残り2つの選択である限定承認と相続放棄について解説します。このような選択を知らない方も多いのが実務現場での印象です。法律規定がある以上、知らなかったでは済まされない相続ルールの概要だけでも自分事として学びましょう。 2025. 5. 25
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